スポーツは激しいプレーの中でケガがつきものですが、中でも足関節捻挫は多くの選手が経験するケガの一つです。
ボールを追いかけたり、相手と競り合ったり、方向転換したりと、足首には常に大きな負担がかかっています。
痛みがなくなったら、もう競技復帰できる?
足関節捻挫をして医療機関や接骨院を受診し、適切な初期処置(RICE処置など)を受け、しばらく安静にすると、少しずつ痛みや腫れが引いてくるのを感じると思います。
練習や試合を休み、友達がプレーしているのを見ていると、「早く自分も混ざりたい!」と思います。そして「もう痛くない!これなら大丈夫!」と感じる瞬間が来るかもしれません。
しかし、痛みがなくなっただけで、本当にケガが完全に治ったと言えるでしょうか?
実は痛みがなくなるのは、ケガをした部分で起こっていた炎症反応(腫れ、発赤、熱感、痛み、機能障害の5つが代表的です)が落ち着いてきた、という段階に過ぎないことが多いのです。炎症がコントロールされて痛みが引いても、まだケガをする前にあった足首本来の機能回復していない可能性があります。

「痛くない」と「治った」は違う!?なぜ油断できないの?
痛みがなくなったからといって、ケガをする前と同じように急に激しいプレーに戻ってしまうと、何が起こるでしょうか?
足関節捻挫は、関節を支える靭帯や関節包といった組織が損傷する「関節支持機構の外傷」に分類されます。これらの組織は、足首の関節を安定させ、スムーズに動かすために非常に重要です。捻挫によってこれらの組織が損傷すると
足首の安定性や動き、バランス能力などが低下します。
痛みが引いても、これらの機能が完全に回復していない状態で無理にプレーすると、
| 再び同じ場所を捻挫してしまう(再受傷)リスクが高まる |
| 足首の関節の緩み(関節弛緩性)が残っていると、靭帯損傷の再発リスクが非常に高くなると言われています。 |
| 別の場所に新たなケガをしてしまう |
| ケガをした足首をかばうことで、体の他の部分(反対側の足、膝、股関節、腰など)に負担がかかり、別の場所に新たなケガをしてしまうことがあります。例えば、股関節や体幹のバランス能力が低いと、足首や膝に過度なストレスがかかりやすくなります。 |
| その他 |
| 自分のパフォーマンスが以前のように戻らないと感じる。 |
つまり、痛みがなくなったのは復帰へのステップの途中であり、失われた「機能」をしっかり回復させることが、完全復帰するために非常に大切なのです。

完全復帰へのステップ:痛みが引いた後、何が大切?
痛みが引いて炎症が落ち着いてくる時期は、「亜急性期」と呼ばれます。ここからが、失われた機能を取り戻していくリハビリの本格的なスタートです。リハビリは段階的に進めていくことが重要です。
| 身体機能回復 |
| まずはケガによって低下した基本的な「身体機能」の回復を目指します。足関節の動く範囲(可動域)や、体重を支えたり踏ん張ったりするための筋力、足首や体のバランス能力などを回復させます。 痛みのない範囲での軽い運動から始め、徐々に負荷を上げていきます。例えば、タオルを使った足首の運動や、チューブを使った抵抗運動、椅子に座った状態や、手で支えながらの片足立ち練習などを行います。 |
| 運動機能回復 |
| 基本的な身体機能が回復してきたら、次は「運動機能」の回復です。歩く練習から始めて、ジョギング、そしてランニングへと進めていきます。この時、正しいフォームで走れているか、足首や膝、股関節などが安定して使えているか(アライメント)を確認しながら進めることが大切です。 バランス能力も、不安定な場所での練習や、動きの中でのバランス保持など、より高いレベルを目指します。 |
| 機能・特異性回復 |
| いよいよ競技復帰に向けた最終段階です。より複雑で素早い動きや技術の練習を行います。方向転換(ターン、カッティング)、ジャンプや着地、ストップ、減速といった基本的な動き、それぞれの競技にあった専門技術 を、実際のプレーに近い形で行えるように練習します。 ケガをした足首に負担がかかりすぎないか、動きの中でグラつきや痛みが再発しないかなどを確認しながら、徐々に強度を上げていきます。この段階では、再発予防のために、個人の体の使い方やアライメントの癖を修正することも非常に重要です。また、全身の持久力や体幹の強さなど、患部以外の機能も並行して強化・維持することもパフォーマンス向上と再発予防につながります。 |

リハビリで大切にしてほしいこと
「痛みがなくなると治ったような気がする」という学生さんの気持ちはよく分かります。
でも、そこで焦って無理をすると、せっかく回復してきた足首が再びケガをしたり、他の場所を痛めたりして、かえって復帰が遅れてしまうことがあります。
だからこそ、リハビリでは次のことを大切にしてほしいのです。
| 焦らず、段階を踏む |
| 専門家と相談しながら、今の足首の状態に合ったメニューを無理なく進めていきましょう。 |
| 「機能」の回復を意識する |
| 単に痛みをなくすだけでなく、ケガをする前の足首の動きや強さ、バランス能力などを完全に取り戻すことが目標です。 |
| 自分から積極的に取り組む |
| トレーナーやコーチに言われたメニューをこなすだけでなく、「どうしてこの練習が必要なのかな?」「これで足首のどこが良くなるのかな?」と考えながら取り組むと、リハビリの効果が高まります。 |
| 不安があれば、遠慮なく相談する |
| 痛みが出たり、練習内容に迷ったりしたら、一人で抱え込まずに接骨院の先生やチームの指導者に相談してくださいね。 |

まとめ
足関節捻挫からの完全復帰には、痛みが消えた後もしっかりとリハビリを継続し、失われた身体機能や運動機能を回復させることが不可欠です。焦る気持ちを抑えて、一つ一つのステップを大切に進んでいきましょう。
私も、皆さんが万全のコンディションでグラウンドに戻り、思いっきりスポーツを楽しめるように全力でサポートします。ケガから学ぶこともきっとあります。
この経験を活かして、さらに強く、賢い選手になってください!


